コンベアーの改造・修理
今回は、工場でよくある運搬用のベルトコンベアーやローラーコンベアーの殆どに使われているスプロケットとローラーチェーンの改造修理の事と、その注意点について、某カラス再生工場のコンベアーの改造修理の案件を例に紹介します。
ローラーチェーンとスプロケットについて
円筒形のローラーとブシュ、長円形やヒョウタン形の板で、ブシュやピンが挿入される穴が2つ開いた内プレートと外プレート、円柱形あるいは円筒形のピンで構成される、これが動力伝達用チェーンの一種です。
①②プレート
プレートは、チェーンに荷重がかかった時にこれを受け持つ部品です。
EKのプレートは強靭鋼を使用し、高い引張強さ、衝撃強度および疲労強度を持たせてあります。③ブッシュ
ブッシュは各部品を介して複雑な力を受けますが、主としてピンと軸受の作用をします。EKのブッシュは合金はだ焼鋼を使用し、表面を硬化させて耐摩耗性を持たせています。
また、真円度を有する軸受面を持っています。④ローラ
ローラは、チェーンがスプロケットに噛み込むときに歯面との衝突による衝撃荷重を受けます。また、歯面とブッシュ面とで挟まれて歯面を移動するため、圧縮荷重と摩擦力を受けます。
EK のローラは、耐衝撃性、耐圧縮性、耐摩耗性などに十分耐えるよう特殊鋼に独自の加工を施しています。⑤ピン
ピンはプレートと同様に荷重を受け、プレートを介してせん断と曲げ応力を受けます。
江沼チェーン製作所より引用
また、スプロケットと噛み合うときにブッシュの中ですべり運動をします。
EK のピンは合金はだ焼鋼を使用し、表面を硬化させて耐摩耗性および耐せん断性に優れています。
ローラチェーンの構造|工業用チェーンについて
スプロケットという歯車と組み合わさって複数のローラーがスプロケットの歯底にそれぞれはまり、ローラーチェーンがスプロケットに部分的に巻き付きくことで張力が作用し、ローラーが歯底から外れることなく動力を伝達する仕組みです。
スプロケット部に取り付けられた駆動チェーン拡大図(修理済み)
修理案件及びスプロケットとローラーチェーンを取り入れたコンベアーを生産工場で運用する上での注意点
今回の修理案件は、ベルトが金属製のコンベアーに使用している駆動チェーン(ローラーチェーン)が切れて、作動できなくなったので、その修理や改造でした。
故障の原因は、ローラーのスプロケットの内輪や回転軸にキー溝がなく、ネジで固定しただけの状態で長時間稼動していたため、稼働中にネジが緩んで、スプロケットが回っても回転軸が回っていない部分が出来てしまい、駆動チェーン全体に掛かる負荷が不安定になってしまって、切れてしまったと考えられます。
駆動チェーンとスプロケットの改造修理前(上図)と
改造修理後(下図)の動きのイメージ図
図の形状はは実物の駆動チェーンとスプロケットとは異なります。
図のスプロケットは 歯数が12 ですが、修理したものは 歯数が13 です。
スプロケットと回転軸の固定部の断面拡大図
(左は修理前、右は修理後)
このように、修理前は図の中央のスプロケットが重なる部分で、この回転軸とスプロケットの間がネジだけでしか固定されていませんでした
この方法だと、稼働中にネジが緩んで外れてしまうので、回転軸とスプロケットにキー溝を設け、キー材を挟むことでしっかり固定できるようにしました。
修理・調整方法
修理前は、図の中央のスプロケットが重なる部分で、この回転軸とスプロケットの間がはめ合いとネジだけでしか固定されていませんでした。
そのため、回転軸とスプロケットにキー溝を設けることで(今回の場合回転軸に新たにキー溝を作りました)、しっかり固定できるようにしました。
ベルト → 駆動チェーン → スプロケットホイール → 軸受部 → ローラー本体 の順に取り外す分解作業を行います。
ローラーから取り外される金属ベルト(受動側)
取り外されたローラー本体(左が修理前)
右が修理後にフライスで軸にキー溝を掘る様子
修理したローラーを、新しいスプロケットと駆動チェーンと一緒に取り付けます。
この時、スプロケットと駆動チェーンのサイズが変わっている場合は、ピッチ(この場合はスプロケットの位置の間隔の事)の調整も行います。
スプロケットとローラーチェーンを取り付けた後ベアリング部をハンマーで叩いて位置を微調整しています。
受動側も距離を調整しながら取付を行います。
ただこのまま取り替えてもローラー間の距離が合わずたるんでしまうので、駆動チェーンの間にロールリングと言う外周に歯型を付けた樹脂のリングを下図のように挟むことでたるみを無くします。
ロールリングの使用例の図
「ロールリング-イマオコーポレーション」より引用
ロールリングについて詳しく知りたい方は、こちらのサイトをご覧ください。
チェーンコンディショナーをワンタッチ装着!ロールリング-イマオコーポレーション
最後にベルトを張り直した後試運転を行い、問題がなければ終了です。
ベルトを張るときにコンベアーの一番端を動かして、そこでベルトとローラーの間に金属棒を挟んで、隙間を作りながらベルトを接続します。
そうすることで、ローラーを傷つけずに接続作業を行うことが出来ます。
まとめ
今回のように、ベルトコンベアーなどに使われるローラーチェーンとスプロケット、回転軸にかかる負荷は大きい為、設計する時には回転軸やスプロケットにそれぞれキー溝があり、キー材でしっかり固定される構造にすることを推奨します。
弊社はこのような工業機械の修理、改善工事を承っていますので気軽にご相談下さい。