他社に所属する技能実習生さんの指導業務

株式会社茂呂製作所は1960年創業、設立は1978年となります。
創業者は私の祖母と初代社長の父親(以下、初代と書きます)になります。
初代は生粋の技術者です。モノを創り出すことが大好きで自分で何回も何回も考えて考えて便利なものを作ります。
Googleで調べるなんてできなかった時代ですし、すごいことだろうな……技術者になり損ねた私には素直にそう思えます。

そんな初代ですが、創業まもなく2名の社員がおりました。
その2名は山梨県からも認められた素晴らしい技術者になっています。
うち1名は今でも当社の指導員として活躍してくれています。

左に2人の指導員、右に初代が写っている写真
現役は引退して指導員になってくれた 2名の社員さんと初代(一番右)

今回は既に引退した初代が、最初は嫌々ながらも指導員として一時復活した内容をブログとして書かせていただきます。

当社の技能実習生を管理してくれているSJC協同組合(以下SJC)からの相談から始まりました。
相談内容は以下の通りです。

  1. 前の組合が不正をして解体されたことをきっかけに、引き継いだ企業様が困っている。
  2. (その内容は)不正をした以前の組合が「基礎訓練をしたと」報告にはあったが実際にはやっていなかった。
    よって技能実習3号になるための試験を受けるための基礎がうまく習得できていなかった。
  3. 応用ができることから実習(業務)はできていたが、試験では基礎が重要。
    しかし、基礎を教えることができる人材が社内にはいない。
    なんとかならないか?

SJCと茂呂製作所は、SJCが設立される頃から製造業向け人材の育成に注力しており、「しっかり基礎から指導をして受け入れよう」「管理してその後もフォローしよう」という思いをもって共同しており、今回の件も迷わず相談に来ていただきました。 
ですが、茂呂製作所の社内人材も「指導して試験合格をサポートします!」と自信を持って対応できる人材は2名しかおらず、その2名も年内は多忙でその依頼を受けている場合ではなかったのです。
今回はごめんなさいかな……と諦めかけていたのですが、そこに登場したのが初代でした。

初代に相談したところ「嫌だよ、面倒くさい」「言葉通じるの?」「そんな簡単なことじゃない!」という反応でした。
ですが、今回のお客様である株式会社サンリツ様からも「なんとか合格させて彼を成長させ国に帰らせてあげたい」とのオファーを受け、その熱意を感じた初代は「合格しなくても知らないよ!」との一言で顔色は渋いまま受託させていただくことになりました。

スケジュール感は以下の通りでした。

  • 受託後1週間以内
  • 必要な消耗品、新品であるべき道具(ヤスリなど)を用意する。
  • 仕上げ加工をする素材を機械加工して用意する(研修、自主練、試験用の計20セット)
  • 場所の確保
  • 2日間の指導研修
  • 約1週間の自主練習
  • 試験2日前の指導研修
  • 試験場所および設備の提供(見守るだけ)

当社が用意すべきものはこちらの通りでした。

指導のために必要となる部材や道具
用意した道具、材料の一部

SJCの理事と通訳の方も終日(責任をもって)帯同いただいたので助かりました。

指導内容を説明しているところ
指導開始の準備オリエンテーション

★初めに正しい計測器の使い方、ハイトゲージによるケガキなどを指導

測定器の使い方を指導しているところ
測定器の正しい使い方指導(基礎)

★ボール盤による穴あけ加工や手でタップ立て(ネジたて)などの指導

ボール盤で穴をあけているところ
ボール盤での穴あけ作業の指導

★厳しくとも心ある指導に徹底する会長の技術者魂が垣間見えます

指導に熱が入っている様子
熱血指導中

★この課題の最大のポイントとなるヤスリによる手仕上げ訓練

やすり掛けを練習しているところ
平面や寸法を仕上げる
やすり掛け作業

★会長の雷が落ちたこともしばしば・・・

キビシイ指導のひとコマ
愛のある厳しい指導

★そんな熱血指導もあってどうにか一通りの流れができるようになりました。

一連の作業を通しで行っているところ
一連の作業を通して行ってみます

★2日間の指導が終わり、明日からの自主練について指示を出しながらもがんばった外国人技能実習生をさりげなく褒める優しい会長の姿

2日間の指導を終えて労いの言葉をかけているところ
最後までがんばったので
労いの言葉をかける優しい初代

★約1週間の自主練もしっかりこなしてからの試験2日前、試験前研修

会長としては「合格はやれん!」だけど「良く自主練してきたのはわかる」「姿勢も良い!」
「後は試験当日、遅くなってもいいからしっかり確認しながらやるように」と最後の訓示を。

試験当日の試験中の撮影はできないため報告のみとなりますが……
大変残念なことが起こります。

試験にて行った作業の成果物。寸法のずれが出ているのがわかる。
(初歩的ミス!)寸法をケガくための
基準線を出し間違ったようです

起点が間違っているという凡ミスが致命的となり不合格と相成りました……。

この結果を聞き、会長も「悔しい」とのひとこと。
技術者魂に火が付いたとともに「また機会があったら指導する!」とのこと。

今回のお話をいただいたSJC協同組合からは下記コメントをいただきました。

今回依頼を受けていただいて誠に感謝しております。
結果は残念でしたが、本人も今回の経験をバネに成長をしてくれたと思います。
無理なお願いを聞き入れていただいた茂呂製作所様に感謝申し上げるのは勿論ですが、受入れ企業としての責務をしっかりと果たしてくれた株式会社サンリツ様の姿勢にも感謝申し上げます。

そして依頼いただいた株式会社サンリツの担当者様からもコメントをいただきました。

今回の依頼を受けていただいた茂呂会長、茂呂製作所の皆さまに感謝申し上げます。
弊社外国人研修生が貴重な経験をさせていただいたことで、本人の将来の成長に繋がったかと思います。
今後とも外国人研修生を受けいれる当社としては、このような経験を活かし、外国人研修生が更なる成長に繋げられるよう努力させていいただきます。
ありがとうございました。

最後に、難しい試験に挑戦した外国人技能実習生のフィン君から

分かりやすく丁寧に教えてくれて嬉しかったけれど、ヤスリ掛けの作業はとても難しかったです。
試験当日は練習したことを忘れないようにと心掛けましたが、途中で順番をうっかり忘れてしまい、慌ててしまいました。
不合格だったと聞いたときは何も考えられませんでした。
それでも、いい経験をさせていただいたと思っています!
ありがとうございました。

茂呂製作所の新しい挑戦、取り組みは成功という結果にはなりませんでしたが、今回の失敗を必ず活かすよう、これからも遠くから日本に来て技術を学ぶ若者のために尽力していきたいと思います。

最後まで読んでいただき
ありがとうございました。
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