ベルト交換 専用治具 特殊工具

(特許出願中です)

「ものづくり」や「ものを運ぶ」現場に欠かせないベルトコンベヤ。
今回は、そんな物流設備のメンテナンスです。

今回メンテナンスするコンベヤの写真です。

コンベヤの断面図を見てみましょう。

コンベヤの構造を図で表しています。

このベルト部分を交換していきます。
その数、なんと219本!

今回のようなベルトの寿命は、ベルト幅や稼動時間、搬送物の重量などで変わってくるので正確にはわかりませんが、今回のベルトは10年くらいは交換していないそうです。
中には補修してあるベルトもありましたので本来は5年くらいが交換目安ではないかと思います。

コンベヤの全体を写した写真です。倉庫の中で相当長い距離に渡るコンベヤです。

本来、ベルトやチェーンを介して駆動するものはテンション(張り)をかける必要があるため、張りが調整できる機構になっています。
しかし、今回交換するコンベヤにはそれが付いていませんでした。
取り付けた状態が適正の張りになるようにローラー間の距離が設計されているのです。

コンベヤのベルトの張りを説明する図です。

この場合、張りをかけながら取り付ける必要があるのですが、これがかなりの力技です。
手で押して付けられるような硬さではないので、レバーで押しながら取り付けます。

コンベヤ交換の手順を説明した図です。ベルトを装着した状態で端のローラーをネジ穴位置まで引っ張る形で取り付けていきます。
端のローラーを外してベルトを取り付けた状態です。これからネジ穴位置まで引っ張ります。

このような状態から無理やり起こして位置を合わせていきます。

てこの原理でローラーを引っ張っている状態の写真です。

この方法では、穴の位置を合わせながら手で微調整するのが難しく、時間を要するため、もっと楽に作業ができるよう専用の治具を製作することにしました。

試作品第1号です。

ローラーの取り付けを楽にするための治具です。試作品第1号の写真です。

「てこの原理」を利用し、ネジで締め込む方式なので、軽い力で動かしながら一人でも穴位置を微調整できるようになりました。

ここで一つ、問題が。強度不足です。
最初はうまくローラー間を広げられるのですが、ある程度広げると治具が細すぎて力負けし、治具自体が曲がってしまいました。

試作品第1号の問題点を示した図です。

試作品第2号です。

試作品治具第2号の写真です。

追加で補強バーを溶接しました。
1号に比べ、強度は増しましたが、補強していない部分がまた力負けしてしまいました。

第1号からの改善点と、試した結果の問題点を示した図です。

試作品第3号です。

試作品第3号の写真です。

3点、改良しました。

1.横幅を10mmから20mmに変更
2.交差する箇所をネジからクリップピンに変更
3.ネジを手で回せるようハンドルを取り付け

細かいポイントですが、2.の「交交差する箇所をネジからクリップピンに変更」することで、接触面をネジよりも増やすことにより、耐久性が増しました。

試作品第3号を使用してローラーを引っ張っているところの写真です。
治具を使って正確にネジ穴位置まで移動している写真です。

今回の治具は、ネジを締め込んでいった時の安定感が段違いです。
力負けすることもなく、スムーズにローラー間を広げることができます。
また、ネジも工具レスで回せるようになり、約20分かかっていたベルト交換が、治具の使用により、約15分でできるようになりました。

ベルト一本で約5分の短縮、それが219本あるので、
5分×219本=1,095分
なんと、約18時間15分の時間短縮に成功です!

この治具は、同じ太さのローラーであれば別の現場でも使用できますし、今回のノウハウがあれば太さの違うローラーに対しても同じ構造ですぐに用意することができます。
こういった経験を蓄積していくことで、お客さまに貢献できればうれしいことです。

今回の現場では、ベルト交換に合わせてモーターの交換も行いました。
ベルト1本に対して1個のモーターで駆動しています。
一つひとつ点検し、結果的に25個のモーターを交換させていただきました。

最後に、担当者から一言!

こちらの物流センターでは、一日に4万個近くもの商品が流れるそうで、そのような現場でメンテナンスに費やす時間を18時間以上も短縮できたのはとても大きな成果だったと思います。

修理やメンテナンスにおいて、既存の工具や道具を駆使して作業することも大切ですが、ただあるものを使って元通りにするだけでなく、
「少しでもお客さまの時間とコストを削減できる方法はないか」
「今後のお客さまの作業がより楽になるような改善案はないか」
製造部門もある茂呂製作所だからこそ生み出せる付加価値を、常に模索し、挑戦しています。

最後まで読んでいただき
ありがとうございました。
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