【焼き嵌めについて】 シャフト軸の再生
当社ではシャフトの新規製作と合わせてシャフト軸の磨耗部分・破損部分の再生も行っております。
今回のご依頼は、食品加工工場で使われている攪拌タンクのシャフト修理になります。
軸が回らなくなってしまったということで、短時間で復旧が求められる現場となります。
スクリュー部分はこの攪拌機専用の構造をしており、汎用品ではありません。
そのため、スクリュー全体を再生するとなると、時間とコストがかかってしまいます。
写真はスクリュー軸ですが、軸部分のみが磨耗して機能しない状態となっております。
幸いスクリュー部分は磨耗していないため、軸部のみ再生する方向で話がまとまりました。
再生方法は色々な手法がありますが、今回は焼き嵌め(ヤキバメ)という手法で磨耗した部分を修復いたします。
焼き嵌めとは
焼き嵌めの工程は、下記になります。
1.磨耗した軸部分を凹凸がなくなるまで切削します。
2.細くなった軸を元の軸径に再生するため、軸に合わせたスリーブ(パイプ状)部品をはめ込み、太くします。
その際、削った軸に対して内径が僅かに小さいスリーブを用意し、加熱により膨張させてから嵌め合わせます。
3.常温になるにつれてスリーブが収縮し、非常に強固に組み合います。
強固な軸に仕上げるため、若干小さめのスリーブを嵌めるというところがポイントです。
当然、元々ジャストサイズのスリーブを嵌め合わせるだけでは、空回りしてしまい軸の再生とはいえません。
この工程があることで「焼き嵌め」と言われているのです。
焼き嵌めのポイント
仕上げ寸法の想定が重要なのですが、通常焼き嵌めに用いる幾何公差x6などを使います。
この軸径ですと φ18+45/1000mm を狙って加工をします。
通常、シャフトはマイナス公差が多いのですが焼き嵌めではプラス公差となります。
また、素材の選択も重要です。
今回は食品加工の現場で用いることから、ステンレス(SUS304)を用いました。
食品加工会社で用いる装置には、ほとんどの場合ステンレスが使われています。
耐摩耗性・耐腐食性が高いためです。
装置の用途に応じて、素材を使い分けるのですが、素材が変われば加熱した際の膨張率が変わってきますので、作業の際には調整が必要となります。
作業内容
それでは、実際に焼き嵌め作業に入ります。
製作したスリーブを電気オーブンに入れて、200~300度に設定して温めます。
真っ赤になるまで温めるイメージがあるかもしれませんが、膨張の寸法からすればそこまで加熱しなくても十分です。
あまり加熱すると熱によるスリーブの歪みが発生したり、材質が変性してもろくなったりと、悪影響が起こります。
温度と加熱時間は、サイズや材質によって微妙に加減していきます。
十分に加熱した後、手早く軸にスリーブを組み込みます。
このときの作業時間は5秒程度で終えないと、スリーブが冷えてしまい組み込めなくなっていしまいます。
一度加熱した素材は、組み込めなかった場合に再度加熱して利用することはありません。
やはり強度に問題が出るためです。
常温まで冷却され、問題無くはめ込みが完了していることを確認できた後で、旋盤で仕上げを行ないます。
微妙なものではありますが、やはり熱によるゆがみが発生するため、その点を修正して完成となります。
焼き嵌めでローコストを実現
しっかりと嵌め合わせた軸とスリーブは強度も十分あります。
複雑な形状のシャフトでは全体を再生するよりローコストで製作が可能です。
今回の案件の場合、シャフト全体を再生する場合に比べると70万円程度の削減を実現しています。
ぜひ、お問い合わせください。