軸棒削り機(掛け軸・襖)の修理
2月5日(土)、兵庫県の企業様より突然の電話が入りました。
その内容は下記のとおりです。
- 軸棒削り機が壊れている
- 以前に修理依頼をしていた会社からは「今回の症状に対しての修理は経験がなく、不安がある」とのことで困っている
- 長年弊社スタッフも愛用してきた機械のため、できれば今後も使っていきたい
大阪営業所が近いこともあり、訪問して対応しようとも思いましたが、機器は無理なく梱包して輸送会社に依頼することができるとのことなので、送っていただきました。
到着した機械はネスター商事製の小型軸棒削り機(ほぞ取り機)でした。
到着して開梱、実物を確認しながらお客様に再度ヒアリングをさせていただいたところ「モーター修理先でも分解しており、ベアリング状態の報告もあった。その破損も確認できている」という事でしたが、経験がないことから不安になっていらっしゃるのではと推測し、茂呂製作所としてその情報を元に、早速対応させていただくこととしました。
状況確認 故障状況の調査
まずは故障(破損部)の確認です。
【状態】
モーター軸側(刃物取付け側)のベアリングケース端面部の破損。
【原因】
経年劣化
(ケーシングの材質もアルミ鋳物である事から軽量化や低価格である反面、温度変化や湿度の影響で強度等が鉄などに比べて弱くなると推測)
【破損部分の状態】
- モータベアリングについては摩耗状態が激しく、負荷でスムーズに回転しない。
- 素材受け部ベアリングについては大きな摩耗は見受けられないが、木材の切屑や埃等の嚙み込みがある。
修理対応 ベアリング交換
まずはモーター軸の両端のベアリング交換をしました。
ベアリング交換は日頃から様々なものを対応しているので全く問題なく行えました。
交換後の確認では負荷なく回転しました。
次にモーターへの軸の組付けです。
今回はスラスト方向(軸と水平)を規制する重要な部分となります。
完全破損には至っておらず再使用可能と判断したのですが、規制強度が低下してしまうので、専用の規制ワッシャを新規製作して組付け調整しました。
また本体側点検を行ったところ、素材受け部のベアリングの動きが悪かったことが分かり、提案をして6か所全て新品に交換しました。
これで全てがスムーズになりました。
作業後の報告
お客さまには下記の通り報告させていただきました。
モーターの可動確認と今後について
機械が到着しましたら、使用する前に「回転時の音(カラカラ音)」や「停止時の惰性回転(スイッチをOFFにしてから自然に回転が停止する時間)」のご確認をお願いしました。
音が無い事、スムーズな停止をすることで修理が完了していることをご確認いただけます。
ご確認いただけましたら完了の承認を頂きたいことをお伝えし、今後は使用する際には同様の時に何か変だなと思われたら、早めに修理依頼をすることでベアリング交換のみの簡単な修理で終わることを重ねてお伝えしました。
素材受け部のベアリングについて
今回の交換で当面は問題が起こることは考えられず、特に定期保守をする必要ありません。
普段の簡単なメンテナンスとして、切屑等で少々動きが硬くなったと思った時には、ベアリングを一度取り外し、灯油などをコップに入れてベアリグに投入後、揺すって洗浄することで保守(延命)できることをお伝えしました。
そのほか、機械がとても古い物であり今後の不安と使い勝手が悪いとの相談も受けました。
使用できる部分はそのまま使い、必要な所と改善したい部分を新規にする形の提案をさせていただきました。
お客さまからのご感想
修理を完了させて、機械を送付して状況を確認していただいたところ、お客様から大変嬉しいお言葉をいただきました。
問題は何一つなくスムーズで以前より使いやすくなった気がします。
掛け軸業界や襖業界ではこのような機械を使っていて、同じように困っている方が増えるのではないかと思う。
今回のことを業界に広めて、困ったときには茂呂製作所に依頼できることを知らせてあげたい。
以上、今回の内容は日本の伝統・芸術・文化を守ることへのお手伝いができた修理業務でした。
お客さまとは今後も情報を共有し、茂呂製作所は修理や改善を通して伝統ある産業の永続に寄与していきたいと思います!
やはり修理業務は楽しいです!
やり甲斐があります!!
今回のお客様
〒655-0021 兵庫県神戸市垂水区馬場通7-23
株式会社 野村美術
TEL. 078-709-6688
URL: https://nomurakakejiku.jp
YouTube: YouTube Channel「掛軸塾」
Facebook: https://www.facebook.com/nomurabijutsu
後日、大阪営業所より納入した機械のその後の調子を確認させていただくため訪問させていただきました。
問題なくご使用いただいており、安心しました。
機械が無い期間には自ら「こんな治具を創り対応していたのです」
日頃から工夫しながら美術と文化を守られていることを見せていただき、感動しました。
日本の芸術や文化を守っていく活動に対して、微力ながらお手伝いさせていただきたいと面談させていただいた事を合わせてご報告させていただきます。