【モーター修理】タッピングボール盤
タッピングボール盤の修理例のご紹介です。
近隣の加工会社様が使用されているタッピングボール盤ですが、モーターも回らず電気ブレーカーが落ちるということで持ち込みいただきました。
出張修理を得意としています当社ですが、社内での修理ですとより道具がそろっているだけでなく、多くのスタッフが知恵を出し合い作業できるのでとてもありがたいです。
症状と合わせて修理期限と直すレベルを相談しました。
まず期限ですが、すぐに直してほしいとのことです。
直すレベルは、破損しているところ以外も数年以内に故障しそうなところは直して、安心して使いたいとのお話でした。
故障状況と対応の見極め
まずは故障状況を見極めていきます。
電源をつないでモーターを回そうとすると、言われていたようにブレーカーが落ちます。
モーター不良は確実となりました。
考えられる原因は、経年変化による、コイル線絶縁部材の絶縁不良によるショートと推測されます。
併せて他の箇所もチェックしたところ、モーターの正逆回転をコントロールするマグネット(MC)もだいぶ摩耗しています。
ここも交換することとなりました。
修理と対応
まずはモーターの修理方法の検討です。
今回のモーターは200V6Pというあまり使われていないモーターです。
6Pというのは6ポールの略で、モーター内の電極が6個存在するという意味です。
通常は4Pが多く、換気扇など高回転の物は2Pが使われています。
性能的な違いは、1分間の回転数とトルクで表現できます。
東日本地区の50Hzの場合、回転数とトルクは下記数値となります。
- 2ポールは3600回転 トルクは4Pの半分
- 4ポールは1800回転 標準トルク
- 6ポールは1200回転 トルクは4Pの1.5倍
ドリルの穴あけや目ネジ加工するタッピングは大きなトルクが必要となるので6Pが使われていると思われます。
早速市販の6Pモーターを調べましたが、同寸法のものがありません。
こういった場合は、アダプターのプレート部品を作って新品モーターを取り付けるか、古いモーターの電線を巻き替える通称「巻き替え」するかの選択となります。
今回は、6Pということもあり、新品モーターは価格が高く納期も長いため、巻き替え修理といたしました。
巻き替えに出すために本体から取り外し、分解いたします。
ここで問題発生しました。
プーリーがモーター軸から簡単に外れません。
おそらく錆による固着が原因と思われます。
無理にギヤプーラーで外そうとするとプーリーが割れる恐れがあります。
そこでプーリーにタップ加工を行い、自作した専用工具を使って何とか取り外しました。
その後モーターを分解してベアリングを抜き取り、巻き替え専門の協力会社に依頼いたしました。
モーターの巻き替えをしている間にマグネットの修理に取り掛かります。
昔の商品ですので同じものが入手できず、同性能の現行品に取り替えました。
取付位置が異なる場合がほとんどですが、取付用のネジ穴を追加加工して取り付けました。
約10日ほどして巻き替え終ったモーターが返ってきました。
綺麗に塗装もされており、ベアリングも新品の為スムーズに回転します。
基本動作はOKでしたが、タップ折損防止機構の調整が気になりました。
通常の穴あけ専用のボール盤は回転軸に大きな力が加わっても力が逃げにくい構造です。
しかし目ネジ加工のタッピング加工では、目ネジ加工の際に切粉がタップ用の刃に入り込んでしまうと回転をストップする大きな力が発生します。
力の逃げることが出来ないと刃物が折れてしまいます。
タッピングボール盤では、そのような時に力が逃げるように滑り機構がついています。
車のマニュアル車におけるクラッチをイメージしていただければわかりやすいかもしれません。
今回は滑り始めるところが少し弱すぎるため調整したいところです。
しかし通常のスパナが入る隙間がありません。
そこで板材料から切り出して薄いスパナを制作しました。
これにより調整が可能となりました。
金属加工部門を有している茂呂製作所ならではの対応だと思います。
しっかりした整備を行ってお客様に引き渡すという、とても良い仕事をさせていただきました。
新品よりも短納期かつ安価に修理できたということで、お客様にも喜んでいただきました。