【応急修理】加熱用ヒーター

今回は食品会社様からの依頼です。

製品の外側に保護用として使われる、透明な薄いフィルムを熱で収縮させる工程の機械が壊れたということで訪問をいたしました。
普段はあまり使わない機械で、年末商品に使うために久しぶりに動かしたところ問題があるということでご連絡をいただきました。

伺ってみると、すでに製造された年末商品が沢山あります。
あとは、透明フィルムの保護材で梱包すればすぐ出荷の状態です。
応急処置でもよいので、何とかしてほしいとのご依頼です。

早速拝見すると、加熱源としてよく用いられる石英管式のヒーターです。
最近はあまり見かけなくなりましたが、電気ストーブとして使われていたものと同じものです。

これなら動作状況が目視で分かります。
通電してみたところ石英式ヒーターが3本中1本しか赤く光りません。
しかも、とても弱く光っています。

さらに細かく見ると、配線の一部が経年劣化のために断線しているようです。

そこで、目視ではなく電気テスターで通電状況を測定しました。
3本中1本しか電気が来ておりません。
断線箇所を特定できたので臨時の配線を作成し、3本とも通電するようにいたしました。
すると、3本中2本が赤く光りました。

点灯しない一本の原因を探るため、ヒーター単体の導通を測りました。
本来はある程度の抵抗値を示して導通があるはずですが、抵抗値が無限大となります。
これは内部で断線していると推測できます。

光り始めた2本も赤く光ってはいますが、菅全体が赤くなりません。
中央部のみ赤くなっております。

配線について

気になりましたのでその場で調べたところ、おそらくY 結線 (ワイ結線、スター結線、星形結線などと表現されます)という配線方法の為だと推測できました。

今は、スマートフォンでおおよそのことが解るので大変助かります。
数年前でしたら、会社に戻って資料を探すところからスタートでした。
本当に時間短縮ができてお客様にも迅速な修理が提供でき、ありがたいです。

簡単な説明となりますが、Y結線とは3本が相互に接続されており、1本でも動作しないと50%程度のパワーダウンとなります。

当初はさらにもう1本動いていなかったので、おそらく本来の25%程度の熱量だったと思われます。
何とか2本発熱する状態になりましたので、熱量は50%程度まで回復いたしました。

配線の方式にはデルタ結線という方法もあります。
これは接続方法を変えることにより約1.7の熱量が得られます。
当然消費電力も比例して大きくなります。

この機械にはついていませんが、熱量の強弱の切り替えスイッチがついているものがイメージしやすいです。
「弱」はY結線、「強」はデルタ結線という形で切り替える場合に、2種類の結線方法が用いられます。

石英管が3本とも生きていれば、Y結線からデルタ結線に変更なども検討できますが、今回は1本故障しているためどちらの結線方法も成立しません。
この回復した50%の状態で試運転いたしました。

結果、残念ながら50%の状態では熱量が足りず、完全には透明なフィルムが収縮いたしません。

すぐに手に入る部品ではないので、現在対応できる方法を考えました。

現在、対応できる方法で対応

まずは、ヒーター部を極力製品の近くに寄せる様に調整いたしました。
最大限に調整しましたが、あと一息熱量が足りません。

そこで、製品をヒーターに自動搬送しているベルトコンベアの速度を遅くしました。

少ない熱量でもベルトコンベアで搬送されながらヒーターの前を通る時間が増えることで、何とか熱収縮が完全にできるようになりました。

生産スピードは本来の80%程度となってしまいましたが、生産量0からすると大きな違いだとお客様に言っていただきました。

本来は、もう少し調整できたかもしれませんが、山積みになっている製品を早くフィルムで梱包して出荷するのが優先 とのことで、その日の応急修理を終了いたしました。

その後の対応

それから数か月後、破損していたヒーター部品と同じものが入手できたため、交換いたしました。

今回のヒーターは電源電圧は200Vですが、ヒーターは115V用というY結線専用の特殊な電圧の為、探すのに時間が掛かってしまいました。

今後も安心して使えるように、ヒーター3本と耐熱用配線すべて交換いたしました。

次に使用する前に修理が完了して、お客様にも安心いただきました。

この様に、茂呂製作所は他社製の装置に対しても、応急修理から完全修理まで柔軟に対応させていただきます。

最後まで読んでいただき
ありがとうございました。
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