オンライン機械修理は可能か!?

株式会社茂呂製作所はお客様からの緊急依頼(機械が故障したのですぐに来て欲しい)に対応する会社ですが、以前から「遠方ではすぐに行けない」という課題を抱えおりました。
その後コロナ禍になり「人の出入りを避けたい」「訪問することができない」などの問題が増え、課題が加算されております。

10年ほど前、「遠隔地医療」のドキュメンタリーを見た時から、当社社長はその手法を機械修理にも取りいれることはできないか?とずっと考えておりました。

今回はその考えが現実のものとして活かされた、滋賀県からの緊急修理依頼を山梨本社から対応した件についてお話させていただきます。

滋賀県栗東市にある株式会社久世金型(くぜかながた)様からいただいた修理依頼の電話から始まりました。
久世金型様は社長様と息子の雅史様、そして社員数名の小さな会社ながら、精密な金型を部品から製造する職人企業様です。

金型は大量生産の現場では無くてはならないものです。
そのため金型製造は納期が遅れると生産現場に大きな損害となってしまうため、その納期を守るために日々奮闘されています。
今回も納期を意識しながら工作機械を駆使して部品を作っていたところ、ラジアルボール盤の主軸が急に昇降しなくなってしまい、部品加工をすることができなくなってしまったそうです。

不具合を起こしたラジアルボール盤
ラジアルボール盤

慌てた雅史様がインターネットでその修理ができる会社を検索したところ、当社で書いた「ラジアルボール盤の修理」ブログに辿り着き「茂呂製作所に頼めばなんとかしてくれるのではないか?」とお電話くださいました。

しかし……

お電話をいただきましたが、滋賀県と山梨県の距離は340km、車で移動して4時間20分ほどかかります。
大阪営業所からはそれほど遠い距離ではありませんが、残念なことに大阪営業所に駐在している技術者は不在でした。
茂呂製作所では原則として片道2.5時間以上かかるお客様への対応はお断りすることとしておりました。

理由は、修理作業より移動時間の方が多い場合はお客様にそのメリットを感じていただくことが難しいためです。
(考え方としては少し逃げでもありますが……)

ですが、せっかくブログをきっかけにお電話までいただきましたので、冒頭で触れた「機械の遠隔地医療」ともいうべきオンライン機械修理のメリットをいくつかお伝えしました。

茂呂製作所は遠隔地でも修理できるようにオンライン機械修理を推奨しています。

オンライン機械修理とは

オンライン機械修理とはZoomやLINE電話などを使って、現地と当社の技術者がいる場所をリアルタイムに繋ぎ、その状況をベテラン技術者が実際に見て判断、そして指示を出させていただき、実作業はその場にいる方(お客様)に行っていただく手法です。

先にも書きましたが茂呂社長が10年前から構想していたものであり、コロナ禍で一段と必要とされるのではないか?という状況の昨今です。

茂呂製作所はスマートグラスの活用も推奨しており、現在お客様に貸し出す準備をしております。
スマートグラスは決して安価な器具ではありませんが、両手が使えることなど様々なメリットがございます。

久世金型様に対して、スマートグラスについても簡単にご説明させていただいた上で、下記のようなメリットがあることをご案内しました。

  • 作業者の移動が無い。よって移動交通費等の費用が無い
  • (スマートグラス等が手元にあれば)即時、修理開始が可能
  • 作業をお客様自らすることによる作業費の軽減が可能になる
  • 作業者が修理を経験することによるスキルアップと意識向上など

今回はスマートグラスを活用する環境は整いませんでしたが、雅史様より「すぐに修理開始できるのがありがたく、何よりも自身のスキルアップができることは将来のためになる」と快諾いただき、オンライン修理をすることで即決となりました。

茂呂製作所としても修理にかかる経費削減のことよりも、上記4番目のメリットについてご理解いただけたことがとてもうれしく、お客様の積極性に対して、最後まで真摯に対応したいと思ったことは言うまでもありません。

早速、オンライン修理の開始です。

現状をお聞きするために、お客様に指示をさせていただきながら原因を探っていきます。

故障診断と作業指示

まず実際に動かしてみます。
この段階で昇降用のモーターは回転することを確認できましたが動きがスムーズではなく、モーターは回転しようとするが何かが引っかかって邪魔している感じが画面から見受けられました。

その後、繰り返し数回の上下可動をしていただいた結果、最初よりスムーズさが出ましたが、引き続き下げていくと、ある決まった位置で動かなくなる現象が出ます。

普段、作業で使っている可動範囲では問題ないのですが、それ以下の位置になると下がらなくなるという状況がハッキリしました。

機械調整と作業指示

上記動作を踏まえ、まずはメインシャフトや昇降用の雄ねじの汚れによりスムーズさが欠けているかもしれないと推測をしました。
検証のため清掃していただきましたが解決しませんでした。

雄ねじが違うなら雌ねじが摩耗しているのでは?と推測し、雌ねじを見ていただくようお願いしたところ、こちらからモニター越しに見た感じでもすき間が大きく見えました。

「すき間1mm以上は雄ねじ&雌ねじ要交換」という雌ねじ部のコーションプレートの注意書きを見て、これが原因なのではないかと思いました。

注意書きが書いてあるコーションプレート
コーションプレート

故障原因の特定

実際に測定していただいたところ、すき間が1mm以上あることを確認し、原因は昇降用のねじの摩耗と判断しました。

普段使う可動域は雄ねじと雌ねじが共に摩耗していきますが、使っていない可動域になると通常は雄ねじは摩耗しません。
雌ねじが摩耗している状態で嚙み合わせが悪くて昇降しないという結論に達しました。

摩耗が確認されたねじ

今回のオンライン修理において、対応前の調査確認に1時間、実際のオンライン対応は2時間、オンライン対応中に別のものが行った調査等に1時間、合計4時間ほどの作業となり、スタート時準備や報告のための書類整理などを合わせて6時間程度の業務となりました。
(その費用として5万円を久世様にお支払いいただきました。)

解決方法(復旧対応)

完全な修理完了としては、ねじの部品交換が必要であることを提案させていただきましたところ、忙しい現状だけは使える可動域で作業を行いその後、「教えていただいた内容で自社内にて修理をする」とのことでした。

もちろん「また何か問題があった場合は遠慮なくご連絡ください」と申し伝えて本件は終了しました。

【後日談】株式会社久世金型様より

「雄ねじをペーパーできれいにすると異音はほぼ無くなりました」とご連絡いただきました。
雌ねじは簡単には分解できませんが、雄ねじは見える部分ですのでペーパーをかけて当たりが取れて良くなったと推測しました。

今回のオンライン修理に対して、下記のようなメリット・デメリットを感じられたということです。

メリット

  • 遠方だったが、最初の電話相談の翌日には修理を行えたこと。
  • 自分で作業するので、次に不具合が起こった場合に対処できるようになったこと。

デメリット

  • テレビ電話をつなぎながらの作業になるので片手となり一人では難しい。
  • 実際の作業は弊社負担となり、長時間拘束される。
  • 料金システムが不明瞭、結果的に少し高額だと感じてしまった。

茂呂製作所としての反省点

  • やはりテレビ電話よりスマートグラスを使い両手で作業ができるようにする。
  • まだまだ経験不足。もっとスムーズに指示を出すなど、こちらも慣れないといけない。
  • 料金表を作るなど明瞭にすることが先決、高額であってもやってよかったと(80点)をいただく付加価値(工夫)を付けられるようにしたい。

上記が改めて感じた反省点となります。

まだまだ課題はありますが、オンライン修理は絶対に可能です。
コスト削減・時代にマッチした機械修理方法を「オンライン機械修理のパイオニア」の株式会社茂呂製作所としてやり続けたいと思います。

これを読んでいただいたご感想をいただいたり、挑戦させていただいたり、ご指導ご鞭撻をいただければ幸いです。

クライアント紹介

今回、オンライン機械修理に挑戦していただいた企業様のご紹介です。

株式会社久世金型 (滋賀県 栗東市)様
https://www.big-advance.site/s/135/1469/

金型の製造、金型のメンテナンス(他社製も対応)を行う少数精鋭の職人集団。
常に技術向上への挑戦心をお持ちで、今回も果敢に挑戦してくださいました。
継承力もありますので、長きにわたり任せて安心な企業様です。

最後まで読んでいただき
ありがとうございました。
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