マシニング加工機モニター修理

遠州VMC400の全景です。手前右側に操作盤があり、その中のモニターが故障してしまいました。

社内のマシニングセンタ「遠州VMC400」が故障しました。

操作盤の写真です。モニターは真っ暗な状態です。

制御盤より煙が出て、モニターが映らなくなってしまったとの事です。

マシニングセンタの銘板と呼ばれるものです。機械の製造年月日を示しており、「1984 06」と刻まれています。

製造日1984年6月という35年選手の機械なので、まず部品が簡単には入手できないとの事で、弊社の技術課で対応してみることとなりました。

茂呂製作所 技術課

茂呂製作所の技術課には、設計から加工、組立まで一貫して対応できる者や電気関係に強い者など、様々なジャンルを得意とする者が揃っています。

技術課では主に、「機械の修理」「メンテナンス」「清掃」を行っています。

これまでにも、ローラーコンベアの緊急修理、高温洗浄機の修理、製麺機のメンテナンス、自動折り曲げ機のメンテナンス、大型マシニングセンターのクーラント清掃などなど、ここでは紹介しきれないほどの数々の案件の対応をしてきました。

そうした経験から培われた技術と知識があるので、メーカーさんに足を運んでいただかなくても社内で対応できる力があります。

遠州モニター 故障内容

こちらも機械の銘板になります。機種名・シリアルナンバーを示すものです。機種名が「TYPE ENSHU-VMC400」シリアルナンバーが「PRODUCTION NO.271」と刻んであります。
機械を制御するサーボモータの写真です。FANUC製の黄色いモータが見えます。現在の機種には赤いモータが使用されているため、黄色いモータは生産から時間が経過していることが分かります。

制御はファナック6M。
今ではあまり見ることの無くなった黄色いサーボモータの使用です。
古い機械ですが、まだまだ現役で活用しており動かないのはかなりの痛手となります。

まずは、不具合箇所を特定します。

操作盤から取り外したモニターの写真です。

既存CRTモニターを取り外して確認してみます。

モニターの基盤の写真です。焼け焦げている箇所が確認できます。

CRTモニターの画面を制御している基盤が焼け焦げていました。
原因はコイルの劣化による発熱だと思われます。
経年劣化のため、防ぐのは難しいところです。
これでは画面に表示されないわけです。

そこで、代わりとなるモニターを用意して、表示されるかどうか試ることにしました。

操作盤本体側の基盤の写真です。操作盤とモニターをつなぐコネクタを示しています。

操作盤本体側の基板から信号出力が出ている部分を探し出し、繋ぎ込みをしていく作業になります。
写真のコネクタから取り出せそうなので、ここから取り替えるモニターへ繋ぐ算段となります。

TRY ①

一般的に流通しているPC用液晶モニターと操作盤とをコードでつなぎ、表示されるかどうかをテストしているところです。画面は緑色で本来表示して欲しい内容とは異なる状態です。

まずは、一番早いであろう解決策として、社内にあった液晶モニター(14インチ:640×680)につなぐことに挑戦しました。
単純につないだところ、解像度が合わないため画面の縦と横の同期が取れず、文字が流れるような表示になってしまいました。
また、この挑戦で判明したのですが、操作盤からの出力信号が 14インチ解像度 のため、液晶モニターと同期するためには信号をRGBに変換する必要がありました。
そこで、下記を試してみました。

オシロスコープにより同期波形の確認も行いました。
結果、RGB信号は出ているようでしたが、解像度の変換は成功に至りませんでした。

TRY ②

次にCRTモニターで試みました。
これも社内にあった21インチのマルチスキャンタイプのモニターを使ってテストします。
30年以上前のパソコンに使われていたもので、今ではあまり見なくなった代物です。
ここでも単純につなぐだけではうまく表示されず、オリジナルのモニター入力コネクタとパソコン用入力コネクタの変換ケーブルを製作しました。
すると、今度はうまくいきました!
TRY①により、RGBの各信号線が判明していたため、作業は想像以上にスムーズに進められました。
やはり何事も経験の積み重ねが重要ですね!

CRTモニターと操作盤をつないでテストしているところです。想定している内容が映し出されています。

表示できることは分かったのですが、21インチでは大きすぎて現場で使うのは現実的ではありません。

今となっては入手困難なのですが、ちょうどいいサイズの14インチのものを今回はオークションで購入しました。

ちなみに重量は17kgほど、両手で腰を入れて持たないと腰痛になります・・・・。

一部アースがうまく取れていなかった所もあり、修復してみました。

成功です!! 映りました!!

暫定的に操作盤の上にCRTモニターを置き、とりあえずマシニングセンタの稼働を再開した様子の写真です。

ひとまずこの状態で使ってもらうことにしました。
このまま作業を続けることはできないことはないですが、やはり目線の上下動が多くなると疲れますし、ミスを誘発しかねません。

操作盤にモニターをはめ込んでいる作業の写真です。操作盤の裏の蓋を開け、モニターを設置します。社内で開発したコネクタの部分に丸印をつけて分かりやすく表現しています。

後日、CRTモニターをケースから取り外し、操作盤の中に取り付けました。
写真の〇印の部分が、社内で製作したモニター入力コネクタになります。
パソコン用モニターケーブルと元々のケーブルの配列が不一致の状態になっており、苦労のあとが見られます。

何とか操作盤内に入れ込むことができ、完成です。

操作盤にCRTモニターを組み込んだ様子の写真です。違和感がないくらいぴったりと収まっているのが分かります。
操作盤に組み込んだCRTモニターを正面から撮影した写真です。はっきりと表示が認識できます。

うまく収まっています。

オリジナルとは画面のR形状が違う為、画面端は少し違和感がありますが、故障前より映りは鮮明になっているようです。

修理完了後の様子

修理が済んだマシニングセンタを操作している様子を撮影した写真です。

段取りから加工まで一貫して担当しているオペレータースタッフです。
従来と同じ状況で再稼働できたことで、ひと安心といったところです。

オペレーターから一言

ある日出社したらモニターが映らなくなっていて、メーカーさんに問い合わせたら時間もコストもかかるとの事でした。

しかも、メーカーさんでも状態を見てからでないと対応できるかどうか分からないと言われ「もうこの機械ともお別れか……」と思っていたところ、社内の技術課で対応してくれることになりました。

実際に修理時間・コスト共に大幅に削減してくれました。
コスト面では1/10、時間面では1/10以上に削減できたと思います。
そのおかげで、生産ストップのロスを最小限に済ませることができました。

もし社内で解決できなかったらこのマシニングセンタ自体が廃棄処分になる可能性もありました。

「もうダメか」と思っていた長年の相棒が復活したので、これからも相棒と一緒に良い製品を作っていきたいです。

最後に

このような社内の修理・メンテナンスに対応することにより、お客さまからのご要望に応えるためのヒントを得られます。

様々なシーンに対応できるように、技術の向上や引き出しを増やすことを怠らず日々努力しておりますので、何かお困りの際は是非、茂呂製作所にご相談ください。

最後まで読んでいただき
ありがとうございました。
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